2008年12月26日

WCAG 2.0 and JIS X8341-3:2009

WCAG 2.0 勧告が2008年12月11日に出ました。奇しくも、私の誕生日でした。

JISのワーキンググループ(WG)は、年内にこれと一致した JIS X8341-3:2009 の原案を作るために議論と作業を重ねています。基本的な方針は、原則 - ガイドライン - 達成基準 はすべて完全一致ということ進んでいます。しかし、周辺部分(プロセスに関する規定などなど)では多くの議論があり収束に向けて怒涛のような作業が進められているわけです。

大きなテーマのひとつは、適合性評価です。JIS X8341-3:2004 は適合しているかどうかを判断できる規格としての完成度を持っていたとは言いがたいのですが、WCAG 2.0 のウリのひとつが testable ですから、今回は評価できる、適合したといえる枠組みを提供しようとしているわけです。これは、いろいろなブレのある評価方法が蔓延してしまっている現状に対する、JISとしての解決策の提案でもあります。

年が明けたら、多くの人に見てもらえる状態になる予定です。また、WCAG 2.0 の翻訳版も公開される予定です。公開されたら、ここでお知らせします。

2008年11月19日

障害者権利条約とICT政策検討会議

障害者権利条約とICT政策検討会議が来週土曜日に開催されます。
ICTをめぐる国連の障害者権利条約の動向などを議論したい方向けのイベントです。
会場が狭いので、必ず事前に申し込んでください。

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主催 日本障害者協議会(JD)情報通信委員会
日時 2008年11月22日(土)13時~17時
会場 マイクロソフト新宿本社会議室(新宿南口・小田急サザンタワー内)
内容
 1)シンポジウム=障害者権利条約とICT政策の課題
   コーディネター=伊藤英一(長野大学社会福祉学部教授)
   シンポジスト=
    梅垣正宏(情報アクセシビリティ研究者)
    「情報アクセシビリティの国際動向と障害者権利条約の課題」  
    薗部英夫(日本障害者協議会情報通信委員長)
    「障害者権利条約の批准をめぐっての情勢と課題
      -政府と障害者団体との意見交換会を通してみえる日本の現状-」
    堀込真理子(東京都障害者ITサポートセンター事務局長)
    「障害者権利条約とICTに関連する国内法見直しの課題
      -機器とサポートシステムの実践的視点から-」
    フロアートーク=
  2)私たちのICT政策提言(案)
   *権利条約にてらして、日本のICT施策に提言しましょう!

*参加申込は、お名前、アドレス、仕事・所属などを
 メール jdict@nginet.or.jp  してください
*資料代として1000円、当日受付にてお支払いください

2008年9月10日

公共サイトのためのブラウザ標準(英国)

英国政府が、「公共サイトのためのブラウザ標準の公的諮問(Public consultation on browser standards for public sector websites)」というブラウザのガイドライン草案を公開した。公共サイトのWeb開発をする人が、どのブラウザを使ってテストをすればよいかを定めるのが目的だ。中身をざっと読むと、どんなブラウザが使われているかを調べて、2%以上を占めるブラウザとOSをサポートし、少なくとも各OSで2つ以上のブラウザをサポートしろ・・・といったことが書かれている。

ワードで15ページのざっくりとした内容だけれど、どこまでブラウザをサポートするかを決める「指針」としては使いやすい内容ではないかと思った。日本では、今でも古いブラウザをサポートすると決めていて、Webデザイナーを苦しめているケースがあるらしい。こういう基準が明確だと、不合理なブラウザサポートを排除できていいと思う。

なお、アクセシビリティはこのドキュメントの主目的ではないが、Lynxを使ってテストしたほうがいいとか、いくつか大事な事だけは書いてあった。

Good Job!

2008年8月19日

Web Accessibility の評価法

Support-EAM Projectのサイトに 

Web Accessibility Evaluation Curriculum というWeb Accessibility 評価のためのカリキュラムのページがある。このカリキュラムは、

の4つで構成されている。評価手法はUWEMで、体系はCEN Workshop Agreement に基づいている。

また、EIAO (European Internet Accessibility Observatory) では、Webサイトをクローリングして評価するシステムの開発も進んでいる。

客観的な評価の方法を考え、評価結果を使う体系を生み出し、実際のサイトをモニタリングする。こういった仕組みは、どうも日本では各企業の自助努力に任されてきた。それは、JIS X8341-3 を含むアクセシビリティJISが、「評価」「適合性」を考えることの難しさから逃げてきたことに一因があると思う。もちろん、JIS X8341 の策定の中ではああいう選択しかなかったのだろう。欧州のこういった動きを見ていると、われわれよりも後でスタートしたという有利さがあるにしても、その構造は美しいなと感じるまた、最先端の研究者がかかわって開発がすすでいることもうらやましい。EUはこの分野に、大きなお金を投入しているから、それがこういった取り組みを支えているのだろう。日本はどう進んでいくのだろう。

2008年6月3日

Adobe Acrobat 9 のアクセシビリティ

Adobeのページで、まもなく発売される Acrobat 9 のアクセシビリティの特徴が紹介されている。要約すると、

  • PDFのテーブル読み上げ順を編集する「Table Editor ツール」のサポート。このツールで、PDFファイルのrole/stateを指定できる
  • 「TouchUp Read Order ツール」の改良。複数行のテキストやユニコード対応など
  • ダイナミック PDF フォームの改良。動的な表示が支援技術でも扱えるようになった
  • IAccessible2 アクセシビリティAPIサポート

詳しいことはまだよくわからないが(よく読んでいないが)、IAccessible2 対応というのが、最も重要な内容であることは間違いない。Acrobat 9 では、Flashコンテンツを扱えるようになっているので、Flashコンテンツも IAccessible2 対応ができたのかもしれないと期待。

ただし、これは Firefox 3FirevoxNVDAJAWSWindow-Eyes などの IAccessible2 対応が進んでいるブラウザや支援技術を用いることが前提なので、今すぐユーザに使える状態ではない。しかし、Acrobat が製品として IAccessible2 に対応したことは大きい。スクリーンリーダーなどの支援技術の対応は確実に加速するはずである。

発売されたら、日本語環境ではどうなっているのか試してみたいところだ。 日本のスクリーンリーダーにも、がんばってもらいたい。

Adobe Acrobat 9 accessibility
http://www.adobe.com/accessibility/products/acrobat/
What’s new in Acrobat 9 accessibility
http://www.adobe.com/accessibility/products/acrobat/whats_new.html

2008年5月27日

オペレートナビ勉強会のお知らせ(2008年6月7日)

私の属する川崎パソコンサポートボランティアが、NECのオペレートナビというソフトの勉強会を開催します。是非ご参加ください。

川崎パソコンサポートボランティアではNEC(株) 鈴木信幸さんをお招きして、オペレートナビの勉強会を行います。NECから提供されているオペレートナビとは、マウスやキーボードの代わりにスイッチを使ってパソコンを操作するためのソフトです。 身体の動くところが少しでもあれば体にあったスイッチを使いパソコンを操作できます。メールやインターネットなど、多くの人とコミュニケーションができ、自分で必要な情報を集め、活用することができます。

オペレートナビ勉強会 開催詳細

日時:6月7日(土曜日) 13:30~16:30
   15:30~16:30は川崎PSV例会、その後、懇親会を予定
講師:NEC(株)  鈴木 信幸さん
場所:福祉パル高津B会議室
   川崎市高津区溝口1-6-10 てくのかわさき3F
   (JR南武線武蔵溝ノ口駅、東急田園都市線溝の口駅 徒歩5分)
   <案内図> http://www.csw-kawasaki.or.jp/org/access.html
         溝口地域包括支援センターと書いてある所です。

参加費用:無料
参加される場合、オペレートナビ「サポーター版」を使い、実習が
予定されています。理解を深めるため、パソコンを持ってこれる方
は、ご持参ください。

<申し込み方法>

下記の必要事項を記入の上、メールまたはFAXでお申し込みください。

メール:kawa-v-info[あっと]ml.psv.org ([あっと]を@に書き換えてください)
FAX :020-4665-9930

----------------- ここから --------------------
オペレートナビ勉強会申込書
-------------------------------------------------
□お名前(ひらがな):
□お名前(漢字)  :
□所属団体(あれば):
□メールアドレス:
□パソコンの持参(有無):
□この勉強会をお知りになったきっかけ:
----------------- ここまで ---------------------

2008年5月19日

フォーラム障害者とICT 2008 (5月24-25,杉並)

フォーラム障害者とICT 2008まであと一週間を切った。 このフォーラムは、3年前まで1-2年ごとに開催してきた「パソコンボランティアカンファレンス」の復刻版のようなイベントだ。コンピュータを使った障害者支援を考えている人には、必ず一度は聞いておいてもらいたい畠山卓朗(早稲田大学人間科学学術院教授)さんの話ももちろんだが、伊藤英一(長野大学社会福祉学部教授)さんがコーディネートする25日午後のシンポジウムに期待している。というのも、シンポジストがすごいからだ。

堀込真理子(東京都障害者ITサポートセンター)さんは、おそらく日本でもっとも進んだサポートセンターである東京で障害者の支援に取り組んでこられた人だし、岡村 章三(視覚障害者・埼玉障害者協議会)さんは中途失明の盲者、井上 吉郎(中途障害者・WEBマガジン「福祉広場」)さんが肢体不自由、 渡井 秀匡(東京盲ろう者友の会)が盲ろう者、茂森 勇(サンマイクロシステム)が脳性まひのかたと、バラエティに富んだ障害のある人、それも有名人たちが登壇するからである。

梅垣は、25日の午前中に障害者権利条約とアクセシビリティをドッキングした話をする。

また、24日の前夜祭では、ビンゴ大会が開催されてらくらくマウスなどの豪華景品が用意されているとのうわさだ。

もう今週週末である。是非とも多くの人に参加してほしいと思う。

http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/ict2008.html

2008年5月6日

リアルタイム字幕入力

友人が、mixiの日記で紹介してくれたリアルタイムに字幕入力する Youtube のビデオを紹介する

。音声認識を用いたり、いろいろな手法が提案されているけれど、字幕入力のような仕事は、結局プロ用の道具が使いこなせる「達人」を育てたほうがいいのかもしれない、と感じさせられた。

 

2008年5月2日

フォーラム障害者とICT 2008

5月25日に杉並で開催される、「フォーラム障害者とICT2008」の案内を掲載します。

http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/ict2008.html

すべての人びとに

人と人とがつながり、

だれもが幸せに生きることのできるICT(情報コミュニケーション技術)を!


障害者権利条約は、差別をなくし、真の平等をめざすための方策を広範囲にわたって規定しています。また、すべての人のために不可欠な権利としてアクセシビリティの保障とその利活用を位置づけています。この10年の間に、パソコンやインターネット、携帯電話などの環境は激変しました。教育や就労をめぐってもとりくみがすすめられている一方で、利活用における格差も広がっています。



JD(日本障害者協議会)は、この間、パソコンボランティアなど、人と人との支援のネットワーク化をはかってきました。今日の状況のもとで、障害のある人の実態をさまざまな視点から明らかにし、内外の激動する情勢を的確に学びあいたいと思います。



また、私たちは、IT(Information Technology)と表現してきたこの分野を、権利条約が表現する Information and Communication Technology=ICT(情報コミュニケーション技術)
として、人と人とをつなぐ人間のコミュニケーションの不可欠な道具として、より積極的に位置づけたいと思います。



今、障害のある人びととICT利活用のための課題を深めあう場が必要であると考え、当フォーラムを企画しました。ぜひ、ご参加ください。


                                    

日時=2008年5月25日(日)9時半~16時半 
   前夜祭=5月24日(土)16時~19時
会場=東京・セシオン杉並(丸ノ内線・東高円寺駅 徒歩5分)
主催=日本障害者協議会
共催=杉並区
後援=内閣府、厚生労働省、文部科学省、総務省、経済産業省、東京都など予定
協賛=日本障害フォーラム、日本障害者リハビリテーション協会、
   東京都障害者ITサポートセンターなど予定

■企画内容
25日(日)午前
●学習・実践セミナー
 1)ホームページで障害者運動を一歩前へ!
     -みえる・きこえる・操作できるホームページにするために-
     講師=岩渕正樹(坂戸パソボラ代表)
        田中克典(埼玉県立越谷総合技術高等学校教諭)

 2)迷惑メールが名簿を盗む?!
     -情報セキュリティとトラブル対策のために-
     講師=寺田慶治(有・コンピュメンター社長)他

 3)情報アクセシビリティと障害者権利条約を読み解く
     講師=梅垣正宏(情報アクセシビリティ研究者)他

25日(日)午後
●あいさつ 杉並区長
●記念講演=畠山卓朗(早稲田大学人間科学学術院教授)
       ともに生きる喜びと気づき -技術支援の実践を通して-
●基調提案=薗部英夫(日本障害者協議会情報通信委員長)
●記念シンポジウム
 目的達成の手段としてのICTの利活用と権利-障害者権利条約の実現にむけて-
  コーディネーター=伊藤英一(長野大学社会福祉学部教授)
  シンポジスト=堀込真理子(東京都障害者ITサポートセンター)
          岡村章三(視覚障害者・埼玉障害者協議会)
          井上吉郎(中途障害者・WEBマガジン「福祉広場」)
          ほか
●レインボーブロジェクト企画展 24日、25日
 杉並区立こども発達センターと女子美術大学の
 共同研究「レインボープロジェクト」の展示です。
 障害児療育支援ソフト「たっちゃんのコネク島」などさわって楽しめ、
 丁寧な解説もあります。
    
■参加費(資料代)=2000円 (当日受付にてお支払い下さい)
■前夜祭参加費(軽食代など)=後日参加希望者にメールでお知らせします

■参加申込みは、以下のフォーマットに書き込んで、
 jdict@nginet.or.jp までメールください。

 1)お名前
 2)ケータイなど、連絡のつけやすい電話番号
 3)胸につける名札に書き込むご自身を表すお仕事、肩書、ご所属など
 4)メールアドレス
 5)午前中の参加予定
  □学習・実践セミナー1(ホームページ)
  □学習・実践セミナー2(トラブル対策)
  □学習・実践セミナー3(権利条約)
   以上はいづれか一つの選択となります。
   会場と教材の都合でぜひ事前にお知らせください。
 6)手話通訳、要約筆記
  □手話通訳が必要
  □要約筆記が必要
 7)前夜祭
  □参加する

2008年5月1日

WCAG2.0 Candidate Recommendation が公開された

2008年4月30日、WCAG2.0 Candidate Recommendation(勧告候補) が公開されました。これから、実装テストを経て Recommendation に進みます。目が離せなくなってきました。

W3C/WAI

WCAG 2.0 勧告候補を公開(プレスリリース)

Web Content Accessibility Guidelines 2.0 W3C Candidate Recommendation 30 April 2008

2008年4月30日

UAIセミナー『Webアクセシビリティ@名古屋』(2008年5月15日)

http://www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/UAI/20080515/

35mmの厚さが目立つ本の写真.緑を基調としたデザインが美しい.

1. 開催案内

2007年11月9日と12月20日に東京で開催した『Webアクセシビリティ』出版記念セミナープラスJIS X 8341-3改訂の最新情報を盛り込んだセミナーを名古屋大学で開催いたします.今回のセミナーは第23回ITRC研究会の一部として開催するものですが,ITRC会員以外の方も奮ってご参加ください.

参加ご希望の方は、参加お申し込みをお願いします.

2. 研究会概要

日時
    2008年5月15日(木) 13時15分~17時半 (受付開始 13時00分)

主催
    ITRC UAI分科会

会場
    名古屋大学情報連携基盤センター(ITC)4階演習室
    〒464-8601 名古屋市千種区不老町
    地下鉄名城線「名古屋大学」駅2番出口より徒歩3分(地下鉄出口は名古屋大学東山キャンパスの中にあります.2番出口から出て北側です.)

定員
    40名 (先着順)

情報保証
    申し訳ございませんが,今回は,要約筆記などの情報保証が出来ません.

参加費

        * ITRC会員及び研究会参加者:無料
        * 一般:1,000円(当日、受付で、現金でお支払いください。必要な方には領収書をお出しします)

    『Webアクセシビリティ ~標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践~』をテキストに用いますのでご持参ください.お持ちでない方は会場での割引販売もしますので参加申し込みフォームに明記してください.(ITRCの会員企業様には,組織ごとに1冊送付してありますので,それをお持ちくださっても構いません.)

お問い合わせ先
    seminar アット accessibility . jp

プログラム(予定)

    * 13:00 受付開始
    * 13:15~14:00:『Webアクセシビリティ概論』(1章から)(渡辺隆行)
    * 14:00~14:45:『アクセシブルなコンテンツ、ナビゲーション、フォーム』(第6章~第8章から)(梅垣正宏)
    * 14:45~15:10:休憩(25分)
    * 15:10~16:00:『WCAG 2.0最新情報』(第14章に最新情報を追加)(インフォアクシア 植木真)
    * 16:00~16:30:『JIS X 8341-3改訂の方針』(今年度に予定されているJIS改訂の方針と,WCAG 2.0との国際協調について説明します)(渡辺)
    * 16:30~16:45 休憩(15分)
    * 16:45~17:25:フリートーク,会場からの質問に答えます
    * 17:25~17:30:クロージング

2008年4月22日

W4A 北京

W4Aに参加するために、北京に来ています。これは、Microsoft Live Writer をテストするために、書いている記事です。

2008年3月27日

Accessible Technology Trends blog スタート

梅垣です。これまで、mixiの中でだけ書いてきた支援技術、アクセシビリティなどの技術の最新動向を、blogとして発信することにしました。